International Discussion Forum2025 開催報告
2023年、2024年に開催された2回の特別招聘プログラムを経て、ついに2025年度のプログラムが開催されました。今回のプログラムでは、「共に学び合い」「能動的な参加」を促すことに注力し、プログラム名を「International Discussion Forum」へと変更しました。

2025年5月21日から23日にかけて「高齢者の社会からの孤立とその対応」をテーマに12名の海外からの参加者と、日本側からの参加者を交えて開催しました。内容は、3名の講師による講義、その講義内容に基づく2グループでの討議とその共有、孤立への対応を実践している自治体への視察、そして参加者からの現在の課題や現状の報告を交えた”Country Report”の発表とファシリテーターによるプログラム全体のまとめで構成されました。
講義1 高齢者の社会参加の促進:支援と包摂に関する新たな視点
坂元晴香 聖路加国際大学 公衆衛生大学院 客員教授
高齢化が進むことにより、家族の形態が変化している。その中で社会的孤立を深める高齢者が増えており、公衆衛生上でも大きな問題となっている。その対策がどのように行われているか、日本とアジア、またはヨーロッパなどの状況の解説と今後必要とされる対策や対応について講演。
講義2 Artrip:アートが高齢化社会と孤立の課題にどう向き合えるか
林容子 ArtsAlive 代表理事、一橋大学院非常勤講師
Artripのプログラムが認知症高齢者やその家族に対してどのような効果をもたらすかの講義と実演。
Artripとは:美術館、介護施設等で認知症当事者と家族を対象に実施するグループ対話アート鑑賞プログラム。
講義3 高齢者の尊厳とつながりの再構築 ― 日本における社会的孤立と孤独への取り組み
堀江裕 藤田医科大学教授 理事長補佐 地域共生社会推進センター長
日本での高齢者を狙った犯罪、高齢者への介護、孤独死の増加など、新たに起きてきた問題は、アジア共有の課題として認識できる。その対応の解決策には地域ネットワークの強化、研究と産業化などがあげられる。高齢者の尊厳を守り健康的な生活を送るための国際的な協力の必要性についての講演。
講義1・3についてはそれぞれの講義後に参加者が2つのグループに分かれ、講義の中で示された課題や今後の展望について、ディスカッションの時間を持ちお互いの理解へとつなげました。
視察では、今回のテーマとの関連性が高い当事者たちの活動である、足立区の「孤立ゼロプロジェクト」のなかで2つの取り組みの視察を行いました。花畑団地では高齢者の居場所づくりを目的とした「サロンなごみ」、六町では地域の見守りを行う「ろくまるウォーキング」に一緒に参加し、それぞれの箇所で当事者たちからの活動の意義や、実際に参加している感想、また交流の時間を持ちました。この交流は参加者にとっても大きな学びを得ることができたようです。
参加者からの現在の課題や現状の報告を交えた”Country Report”は下記の通りです。
Indonesia | Current Situation and Future Challenges in Older People’s Care in Indonesia |
Lao PDR | National Strategy, Action Plans and Challenges * |
Nepal | Key Issues and Future Pathways for Action* |
Philippines | Older Persons in the Philippines |
Taiwan | Care for Older People Living Alone in Taiwan |
Thailand | Policies and Initiatives in Addressing Social Isolation and Loneliness among Older Persons in Thailand |
(*のタイトルは事務局にて使用したslidesから抜粋)
今回、新たなスタートを切った招聘プログラム改め「International Discussion Forum」は、改善すべき点も残されていますが、多くの方々のご協力のおかげで、好評のうちに無事終了いたしました。現在、事務局ではすでに来年の開催に向けた準備を始めております。
